あなたのそば

仕事が休みの朝は、早くから体がウズウズ。

そう、大仕事が私を駆り立てる。

ベランダの南側に少しだけ日よけの板を張って欲しいのよ、と

前々からダンナにお願いしてるのに、自分のモチベーションが

あがらないもんだから、ちっとも取り掛かってくれない。

だから、板が張ってあるものと仮定して、模様替えに取り掛かった。

「おっ、やりますか?それにしてもよく動きますねえ」と出勤前のダンナ。

(見てろよ。そのうち板だって自分で張ってみせるから)と心の中で

つぶやいて睨みつけてやった。すかさずダンナは「板張るのって、

お前が考えてるほど簡単じゃないんだよ。」

(フン。私がこうやってせっせと健気に片付けてたら、きっと

かわいそうに思って、板張ってくれるさね)

「ここさあ、板じゃなくて、すだれかよしずでもいいんじゃない?」

(ほう、そうきたか。ん?それもいいか。)

ワガママでひねくれもので頑固で、そのくせ人の意見にすぐ左右される

私の性格があますところなく明らかになりつつあるなか、

模様替えは着々とすすみ、予想どおりのできばえ。

仕事に出かけていったダンナが今日は早く帰ってくればいいな、と

思いながら、あわてて溜まっていた洗濯物を干した。

お昼をすませたら、お決まりどおりの睡魔におそわれて、一眠り。

そして、目覚めて(ひとり‥)って思った瞬間、恥ずかしいけど

私はいつもおばあちゃんを思い出す。まるで赤ちゃんが目覚めたときに

誰かを呼んで泣くように。

(ごめんね、おばあちゃん、最後は傍にいてあげられなくて)と

おばあちゃんに呼びかけると、(お前は幸せかい?ダンナのそばが

お前は一番幸せなんだよ)って、おばあちゃんの声。

お葬式のときも、悲しくて顔をあげられなかった私におばあちゃんは

そう言ってくれた。

だから、ダンナが帰ってきたら、憎たらしいこと言わないで優しくして

あげようと思った。

そこから、なんの脈絡もないまま、(そうだ、ストレートパーマ)と

梅雨時になるとひどくなるクセ毛対策に液を買ってきて自分でやってみた。

そこへ、仕事を早く終えたダンナが帰ってきて、大わらわ。

(おばあちゃん、どうしよう)

「時間あるから、買い物にでも行こうか。ん?何やってんだ?」

「ク、ク、クセ毛直し」

かくしてスッピンで、ダンナが買い物があるっていうんでホームセンターへ

出かけ、私はそこでハーブを買い足していそいそと鉢に植え、

ベランダの模様替えが完成とあいなった。

「お茶入れるね」といつもより甘いトーンの声が出たので、

(おばあちゃんのお陰だ)と感謝して、ハーブをながめながら

午後のティータイム。もっぱら水遣りはダンナがしてくれるので

その極意とやらを拝聴しながら、(おばあちゃん、これが幸せよね)

と秋のように澄み渡った空を見上げた。

(それでいいんだよ)って、おばあちゃんの声が聞こえた。
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by morinotomosibi07 | 2008-06-12 23:21 | 自分のこと  

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