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ふたりぼっち

末っ子みーこが図書館で借りてきた本、金子みすずの童謡集のなかのひとつ。

    「お花だったら」

  もしもわたしがお花なら
  とてもいい子になれるだろ。
  
  物が言えなきゃ、あるけなきゃ、
  なんでおいたをするものか。

  だけど、だれかがやって来て、
  いやな花だといったなら、
  すぐにおこってしぼむだろ。

  もしもお花になったって、
  やっぱしいい子にゃなれまいな、
  お花のようにはなれまいな。


県立図書館の建物はとてもモダンなつくり。

駐車場から横断歩道を渡って、正面玄関につづく建物脇のわずか20メートルほどの歩道

には、街路樹が茂り、都会のなかのオアシスを思わせたりして、吹き抜ける風も、忘れて

しまった都会の匂いのようだった。

迷子になんかならないのに、ミーコの手をしっかり握り締め、「こういうところもいいね」と

軽めのカルチャーショックを感じる自分がすっかり田舎ぐらし人のようでちょっと誇らしかった。

もうはるか昔、20数年前、長女リサの手をひいて、見知らぬ都会や住み慣れた都会の

あちこちを訪ね歩いたことをふと思い出した。見知らぬ都会では、その当時仕事で多忙

を極めていたダンナのジャマをしちゃ悪いと、リサとふたり、「今日はどこへ行こうか」と

頭を悩ました。都会の片隅でたったふたりぼっちのような気持ちで、無邪気で明るく笑う

リサを見つめた。ダンナの仕事が片付いた日には、世の中でこの3人でもいいな、と

思うくらい幸せな気持ちだった。

住み慣れた都会では、見慣れた街やお店も、リサがいないときより新鮮に見えて、

一人の時の思い出に塗り重ねるようにいくつもいくつも思い出を重ねた。

不安や寂しさもリサがいたから、乗り越えられた。もう充分親孝行したんだからと、今都会で暮

らすリサに言いたいところだけど、いつまでも大人になりきれず、迷子のようにさまよい歩く

リサには、まだ別に伝えたいことがありすぎて、この言葉はとっておこうと思う。

いつか、大人になったときのために、とっておこうと思う。

by morinotomosibi07 | 2008-09-01 15:02 | 長女のリサのこと  

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