苦手なもの

「おかあさんね、今日ボタモチつくるからね。楽しみにね」と末っ子ミーコに

言った何日か前のこと。「私ちょっとアンコ食べれるようになったよ。ゴキブリもクモももう怖くな

いよ!!」とミーコが得意気に言った。(そうか。アンコ苦手だったな。でも、食べられるって?

なんで?)と思ったけど、「おかあさんはゴキブリはまだ怖いなあ」と返事した。

私が張り切って作るってんで、気を使ったのか、それともここらで食べられるようにしないと

みんなが食べてるとき、おいてきぼりのように感じるのがいやなのか、アンコ嫌いをちょびっと

克服したり、虫にびびらなくなったりしたミーコは、ほんとエライなと思う。私は苦手な牛乳や

トマトを克服できたのは、もう立派に大人になってからだし、ゴキブリなんぞはおそらく

一生苦手なままだろう。そう言えばミーコはキムチも少し食べれるらしい。私は食わず嫌い

なのかもしれないが、ピリ辛味が苦手。「柿の種」はピーナツだけ食べる。うどんには

七味とかまずかけない。タバスコなんかもってのほか。その私があるお店で冷麺を注文したら

韓国冷麺が来てしまい、仕方なく食べることになった。キムチはもちろん食べれなかったけど

ピリ辛のエキスがたっぷりしみこんだ麺やスープは、残すと申し訳ないのでなんとか食べた。

ノック・アウトを喰らったような気持ちで眠りについたその夜、キムチの入ったツボのようななか

に鼻までどっぷり漬かっている夢を見て、もがき苦しみながら目が覚めた。再びノック・アウトを

喰らってしまい、しばらく蒲団から起き上がれなかった。これを克服するのはもうあきらめて

いる。こんなことも思い出した。小さい頃夜中に目が覚めてしまって、なかなか寝付けなった時

ほんとに朝が来るのかと心配になって、何度も母を起こしに行ったこと。雷のせいで、停電して

しまった夜、家族で一階の部屋に集まっているとき、「あれ?いつもいっしょのお人形さんは

どうしたん?二階においてきたん?かわいそうになあ、お人形さん泣いてるやろうなあ」と

大人たちにからかわれ、悔しくて、「雷なんか怖くないもん。二階にも上がれるもん」と大見得

切ったものの、なかなか取りに行けなかったこと。親戚のおばちゃんが子供をかばって、全身に

大火傷を負って入院したと聞かされ、「お見舞いにいこな」と祖母に連れられ、行った病院。

真っ暗な夜道のなか、ボーッと光る病院の玄関が近付いてくると、全身を包帯でグルグル巻き

にされたおばちゃんの姿を想像して、足が止まってしまって祖母を困らせた。病室の

おばちゃんは、グルグル巻きでもなんでもなくて、「あら、よう来てくれたなあ」といつもの明るい

笑顔で迎えてくれた。ちょっと安心したけど、「胸から太ももまでえらい火傷らしいで。先生があ

の火傷でよく我慢できたもんやって、おばちゃんのこと褒めてたんやで。おばちゃんに言うたら

なあ、子供をかばうのに必死やったって。えらいわなあ」と祖母が話すのを聞いて、 

帰り道、おばちゃんの笑顔の下の痛々しい傷のことを想像すると、また怖くなって祖母の手を

いつにもまして、ぎゅっと握り締めたこと。

大人になるにつれ、必要とあらば暗い部屋に一人で行けることや、眠れない夜でも、必ず朝が

来る事や、子供のためならなんだって出来る事がわかってきた。大人たちに見守られながら、

怖いものや苦手なものを克服していく力が子供にはあるんだってことが。それは子供自身に

備わってる力なんだってことが。どの子にも。どの子にも。大人たちは脇役で、主人公は

いつだって子供達。それを間違わないようにしようと思う。まだまだ苦手なものを克服できない

大人だからこそ。

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by morinotomosibi07 | 2008-09-25 14:40 | 自分のこと  

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