さよなら、アナ

とっても感動したコンサートに気分も上々で、(さっ帰って軽くなんか食べて早々に寝よう!)

とアナと子供たちを車に乗せたまでは良かった。ダンナは来てないけど、ユリ氏がいるし、

帰りの車の中はきっと音楽の話で盛り上がるだろうし。一日目の夕飯のとき、「私は、ビートルズ

が好き」とアナに言ったら、フンフンと大きく頷いてくれたので、「ビートルズはやっぱ世界的

だな」と気を良くした私は、「イエスタディ知ってる?」と聞いてみた。するとアナはちょっと

首をかしげた。「知ってる」?って聞いたつもりが単に「イエスタディ?」と言っただけだったので

アナにしてみれば(昨日?それがどうした?)と思ったに違いない。ここはひとつ

歌わなくてはと思い、「イエスタディ~♪」と歌ってみせた。これが思いのほかうけたもんだから

何回も歌ったら、ダンナに「バカだねえ~♪」と返された。

だから、この夜も音楽の話をしながら帰ろうと思った。アナの想像を超える

披露ぶりが気にはなったけど。

キーを差し込んで初めて異常事態に気がついた。(まさか…)

そう、バッテリー完全にあがってる。そうライトつけっぱなしだったのだ。

知り合いはもうとっくに帰った様子。そこで頭に浮かんだのは、イケメンのお兄さん。

確か近くに住んでるはず。思い切って電話したみたら、二つ返事で来てくれることに。

ここぞという時にお世話になるのは、これで何回目だろう。さっそうと車で現れていとも簡単に

治してくれた。「ママいい?帰るまで絶対エンジン切らんので。何があってもで。たとえば

コンビニ寄るとしてもエンジンはつけっぱなし。わかる?わかるよね」 「わかるよ。切ったら

いけんのやね。」 「絶対にね。ママいい?聞いてる?」 「聞いてますとも。」

「なんか心配やなあ。」 ちょっとしつこいけど、なんて優しいイケメン兄さん。私はこの時

決めた。この人を息子だと思うことに。ケイさんにお兄ちゃんができた。

お兄ちゃんが駆けつけてくれたときに、アナのことはポルトガルから来てるとは軽く紹介したんだ

けど帰り際、お兄ちゃんは「ママ。あの子は今日どこに泊まるの?」と聞くので「ウチよ」

と言うと「え~っ」と言って驚いていた。「ど、ど、どういう知り合い?」 事情を説明すると

「へ~。ママ大変そうやな。じゃがんばって!」と言って帰っていった。なぜか(ごはんしっかり

食べるのよ)と声をかけそうになったけど、しっかりしないといけないのは私の方だ。

車の中でぐったりしているアナに何度も何度も「アイム ソーリー」を繰り返した。アナがしきりに

なにか言うので「きっと『あなたのせいじゃないよ。気にしないで』と言ってるんだ」と、子供達に

言ったら、「あんたのせいに決まってるやろ!!」と言われてしまった。その後もアナに

「ソーリー、ソーリー」を繰り返した。「おかあさん、アナ寝てるから静かに!!」と言われて

また「ソーリー、ソーリー」を繰り返した。昔女性の国会議員の人が小泉総理に「総理、総理」

と詰め寄った時の気持ちがよくわかった。まったくシチュエーションが違うけど。

アナはその夜、お風呂にも入らず眠ってしまった。アイム ソーリー。

最後の朝は早朝からアナを起こし、朝食を勧めた。すっかり身支度を整えたアナが

荷物と一緒に抱えてきたものは、たくさんのポルトガルのおみやげ。

マフラーやお菓子やペンやママが作ったというジャムとポプリや絵葉書。そして日本とそっくり

な独楽も。私もお返しにレターセットやハンカチやお箸やキャンドルをあげた。お箸は

裁縫が得意なチカちゃんに教えてもらって作ったお箸袋に入れて。

急に寂しさがこみ上げてきて、(ウルルン滞在記はウソじゃない)と思った。なんかしんみり

してしまったので、かわるがわるリビングに現れる子供たちに、いちいちアナからのおみやげの

説明をしながら、なんとかごまかした。アナは私に顔を近づけてその様子を聞いていた。

集合場所に着くと、もうすでに一行は集まっており、思い思いに別れを惜しんでいた。

アナはウチの愛犬チコを抱きしめ、「ポルトガルに連れて帰るの」と言いながらみんなに

見せていた。チコはみんなから可愛がってもらって得意気な様子。チコの方に意識が

行っていたぶん、アナとあんまり目をあわすことがなくて良かった。泣いてしまいそうな

自分に自分で引いていたから。いよいよバスに乗り込むとき、アナがちょっと寂しそうに

笑った。私は「あなたに会えて良かったけど、今寂しい」とがんばって言ったら、

ダンナが(よく言えたな)と言う目で私を見て頷いた。ダンナは「オブリガード」と言って

握手していた。アナはさしていた傘をたたんでダンナに渡し、黒いスカーフを頭に巻いた。

エキゾチックな顔の異国の少女のアナがそこにいて、もう二度と会えないのかなと思うと

せっかく笑った顔がゆがんでしまった。

バスの窓を開けて手を振る人たちの中にアナの姿はなかった。一生懸命探したけど

見つからなかった。(アナも泣いてるのかな。きっとそうや)と思うことにした。

いつかアナの住むコインブラの美しい街を訪れてみたい。
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by morinotomosibi07 | 2008-10-06 13:43 | 世の中のこと  

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