2007年 07月 24日 ( 1 )

 

バイバイ、ケイさん。

短い夢から覚めたと同時に、長い長い夢からもやっと目が覚めた。

「最後の2ヶ月が一番楽しかったよ」 その言葉で長男ケイさんの

10年にわたる野球生活が終わった。

いっしょにいろんな夢を見せてもらった。

その話をちょっと長くなるけど、聞いてもらえますか?

ケイさんにはひとつ年上の姉、エリさんがいて、その影響で、ものごころついたら、

手にはリカちゃん人形が。これはヤバイとだんながウルトラマンの人形を

買ってきた。今度はそれを手に、リカちゃんを持ったエリさんと人形ごっこ。

「意味ないじゃん!!」

次に、バットとグローブを買ってきた。これが見事はまった。

そして、ここから、ケイさんの挫折につぐ挫折の

野球人生が始まった。いつか野球選手になりたいと言うケイさんの申し出に

「まずはキャッチボールができないとな」と幼稚園のグランドでだんなの猛特訓。

二年生になったころ、「そろそろ野球部に入りたい」との願いは通るはずもなく、

連日の猛特訓はつづいたが、「どうしても」の泣きながらの申し出に

(私もいっしょに泣いたな) 

「わかった。そのかわり途中でやめることは絶対許さんからな」

次の日から、ブカブカの練習着に着替え、家を飛び出して行った。

試合があるというので、見に行ったら、なんと外野にケイさんの姿。

「どうかボールが飛んでいきませんように!」って、必死でお祈りした。

ある日ケイさんが「監督からピッチャーやるかって言われた。ピッチャーって

どうやるんですか?って聞いたら、お前外野からホームにボール投げきるやろ。

あれといっしょや。ピッチャーの方が距離が短いから簡単やろってそう言われたんや。

ボクやってみたい」  うそや。無茶苦茶や。できるはずがない。

次の日、「おとうさん、ストライクが入らんのや。監督に言ったら、家で練習してこいって」

そう、ここから、だんなとの師弟関係がいやおうなしに始まった。

来る日も来る日も、練習。天才的に不器用なケイさんは、一個のことしかできず、

だんなの罵声を浴びて、泣きながらの練習。試合ではいい結果が出ないと言っては

号泣。ある日は、眼科検診でD判定が出たと言って、泣きながら帰宅。

「おかあさん、ボクもう野球できんの?」

野球って、泣かずにできないものかと、腹がたった。

6年生で中学のボーイズリーグにおまけで入れてもらって、

「どんなことがあっても、車で送らないで下さい」との監督のお達しに

きつい坂道を自転車で通うことに。ドアの前でたちすくみ、「キツカッタ」と

またも涙目。40度の熱が出た時に、「今日は練習行けんよ」って言ったのに、

こっそり出かけようとしてて、「あんたなあ!」って叱りとばしたら、

布団のなかでバッドとグローブ抱き締めて、泣いてた。

来る日も来る日も走らされ、3ヶ月がすぎた頃、「だいぶ体力ついてきたな」

と監督に言われ、初めての遠征へ。

中学3年生相手に投げ、ホームランを打たれ、またも号泣。キャプテンが

一生懸命慰めてくれたそう。

初めての遠征で、しかもホテルのシングルとくれば、寂しくて泣くんじゃないかと

心配で「どうだった?」と聞くと、「いやあ、快適。快適。先輩がカード買ってくれて

すごい番組も見れたし!!」 ケイさん、やるねえ。

高校はいつからか胸に秘めていた憧れの高校へ。

私服はださいけど、真っ白なユニフォームが何より似合ってた。

だんなとの二人三脚は相変わらずで、私は軽く嫉妬して、

「はやく一人前になって、おとうさん返してね」ってマジで言ったりした。

依然としてコントロールに苦しむケイさんは、途中、バッターに転向したらの声に

耳も貸さず、ピッチャーにあくまでもこだわった。

でも、下手くそな外野の守備とヒットを打ってベースを回るケイさんの姿も

見せてくれて、「一生忘れない」って思った。

最後の最後まで、自分の野球を貫いて、最後の試合はマウンドにはたてなかった

けど、後輩の成長を心から喜び、チームメイトの活躍に胸躍らせ、

自分もこのメンバーの一員であることの誇りと感謝の気持ちで

彼はユニフォームを脱いだ。そのユニフォーム私がもらいたかったのに、

一年生の後輩と約束したからと汗のついたままあげちゃったそう。

あんなに泣き虫だったケイさんが、最後は涙は一滴も流さずに、

すがすがしい笑顔で、長い長い野球生活とお別れした。

数ヶ月前、だんなに「これからは、オレ一人で練習するけん」と言って、

二人で大声でどなりあい、男の子が大人になるっていうのは、大変だと

ドキドキしながら、耳をそばだてて聞いていた。

ことあるごとに、「おかんも大人になれよ」ってケイさんに言われるようになって

気付いたこと。泣き虫で不器用で頑固なケイさんを全部否定してきたけれど、

ほんとは優しくて、誠実な男の子だったんだと。泣き虫にかわりないけど、いつからか

人前で泣かなくなったぶん、陰でいっぱい泣いたんだろうなと。

そんなケイさんが大好きだったと、言える時が来たら、ちゃんと言おう。

野球のバッグをギターケースに変えて、駅にむかう後ろ姿を見ながら、

何かを期待するのではなく、野球からたくさんのことを学んだように

次に向かう何かからもきっと大事なことをつかんでくれると、信じて

応援しよう。

「おれ、楽しかった」って、その言葉がまた聞きたい。
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by morinotomosibi07 | 2007-07-24 15:08 | 長男ケイさんのこと